<朝晴れエッセー>ボクの集大成

6月。若い友人、ドイ君からメールが来た。「夏の大会を野球部生活の集大成として頑張ります」

ドイ君は公立高校3年の野球部員である。彼が小学高学年の頃、家が隣同士であった。毎日学校から戻ると、車庫の壁に向かっていつも一人でボールを投げていた。

「相手しようか?」。気の毒に思って誘ってみた。すると「お願いします」とにっこりとしてくれた。以後キャッチボールをする仲となった。多少腕に覚えはあったが、ドイ君は次第に手加減をしてくれるようになった。すでに七十爺には手に余る速球だった。

7月。夏の大会の組み合わせ発表があった。まずい!相手は甲子園出場10回を超える名門だ。コールド負けでも勲章だな。勝手に負けと決めていた。

初戦。酷暑に負けてネット配信で見る。ドイ君が昔通りのニコニコ顔で投げている。しかも勝っている。まさか? どうしたんだ? 夢か? がんばれ! ついに完封だ! やったぞドイ君! 爺さんは一人踊っていた。

次戦で負けて、慰めのメールを送ると、短い返事が来た。「やりきりました。次は大学受験です!」。切り替えの早さは若さの証だ。

さて、爺さんはどうする!? 集大成も転身もできない身がチト悲しい。

粕谷俊樹(85) 大津市

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