1500年前の金銅製冠や蛇行剣保存へ「文化財のお医者さん」活躍 次代へつなぐ科学の目

富雄丸山古墳で出土した蛇行剣の柄部分。黒漆が当時の状態で残っていた=3月、奈良県立橿原考古学研究所

藤ノ木古墳(奈良県斑鳩町)の国宝・金銅製冠、富雄丸山古墳(奈良市)の国内最大の蛇行剣…。歴史ファンを魅了した数々の発掘品の保存と展示公開に欠かせないのが保存処理。さびの除去や修復などミリ単位の作業の連続で、「文化財のお医者さん」といわれる。半世紀以上にわたって保存処理に取り組むのが橿原市の県立橿原考古学研究所(橿考研)。平成元年に「保存科学研究室」が開設されて35年を迎えた。節目を記念した同研究所の企画展(9月27日まで)を通じ、考古遺物と向き合い続けてきた歩みが見えてくる。

保存処理といっても、決して「処理」ではない。「保存科学」。文化財の調査や保存・修復のために自然科学の手法を応用した研究分野を示す。

千年、2千年も地下に埋もれた金属製品や木製品の保存は、とりわけ一筋縄ではいかない。金属といっても青銅や鉄など素材はさまざまで、さび方も残り具合も異なる。修復方法を決めるには、金属の種類と傷み具合を「科学の目」で把握するのが第一歩。その過程で当時の技術などが解明できる。保存科学といわれるゆえんだ。

「今ある遺物の形状を変えないまま将来に伝えること。この姿勢は何十年たっても変わらない」。奥山誠義総括研究員は語る。

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